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世界に向けたブランド発信の旗艦店 ~『ARITA PORCELAIN LAB』

2017年01月31日

移住・定住促進へ、暮らしの提案

 日本磁器発祥の地・有田。5月の大型連休期間中に開かれる春の陶器市は、100万人を超える人出で賑わいます。その中心地・内山地区は、江戸~昭和初期にかけて建築された漆喰塗の建物や洋館が残る、国の重要伝統的建造物群保存地区。昨秋には有田焼創業400年事業「有田まちなかフェスティバル」が行われ、町は大いに盛り上がりました。
 ただ、その有田でも人口減や少子高齢化が進み、陶器市のメーンストリートとなる「皿山通り」でもカーテンを閉じたままの店が目につきます。町では「有田地域おこし協力隊」を募り、2015年から移住・定住促進に乗り出しました。

 メンバーの一人・佐々木元康さんは埼玉県からUターン、有田の魅力やイベント情報を移住支援サイト「アリタカラ」などで発信するほか、「空き家見学ツアー」を定期的に実施して町内外から参加者を募っています。その佐々木さんが、いま力を入れているのが、空き家・空き店舗のリノベーションです。有田には陶磁器専門の専修学校・県立有田窯業大学校があり、多くの窯業関係者を輩出してきましたが昨年春、佐賀大学との統合により芸術地域デザイン学部に移行、この4月からは佐賀大有田キャンパスとして再出発します。これを機に、学生たちの活動拠点にしてもらおうと、上有田駅近くの空き家をシェアハウス兼アトリエにすべく奮闘中です。

 「窯業大学校OGの方に『在学中、町の中に溶け込む機会がなかった』という話を聞いて、若い人たちが集い、活動できる場を作ろうと思いました。仕事や学びの場、住まいだけではなく、有田での〝暮らし〟を提案・提供していきたいと思っています」

 ネットなどで活動を知り、協力してくれる仲間たちとDIYで少しずつ作業を進めており、4月の完成を目指しています。

『ARITA PORCELAIN LAB』旗艦店(右)から皿山通りを望む

有田焼モダンブランドの情報発信拠点

 まちおこしに取り組むのは、行政だけではありません。有田焼の老舗窯元・アリタポーセンラボは昨年10月、皿山通りにある旧工場をギャラリーやカフェ、キッチンスタジオなどを併設した複合店舗『ARITA PORCELAIN LAB』にリニューアルしました。

 1804年創業の同社はこれまで、装飾品から一般和食器まで幅広く生産してきましたが、2004年に伝統技法と現代のライフスタイルを融合させたブランド『ARITA PORCELAIN LAB』を立ち上げました。今回の店名にもなっているこのブランドは、シンプルでモダンなデザインが高く評価され、国内の飲食店に多数納入、近年は海外展開にも力を入れています。この取り組みをさらに推し進めるため昨年10月に「有田製窯」から現社名に変更。あわせて、国内外から訪れる人たちにブランドを伝え、発信するための拠点として、今回のリニューアルが行われました。

シンプルでモダンなデザインが高く評価されている『ARITA PORCELAIN LAB』

外部の人を受け入れる場づくり

 『ARITA PORCELAIN LAB』の店内は、その間口からは想像できないほど広々とした空間が広がっています。『ARITA PORCELAIN LAB』の器でドリンクやスイーツが楽しめるカフェでは、ショコラティエ・野口和男さんによるオリジナルチョコが大人気。その奥はキッチンスタジオ&イベントスペースとなっており、有名シェフや料理研究家を招いたレストランイベント、料理教室などが開かれています。併設されたギャラリーは落ち着いた黒で構成され、『ARITA PORCELAIN LAB』の全ラインナップが幻想的な佇まいを見せています。庭には、有田の泉山で発見され、磁器の原料となった陶石が並べられており、その歴史を知る場所にもなっています。

 「移住」そして「観光」…創業400年という節目の年を終えた窯業のまちでは、その伝統文化をベースに、外部の人たちを受け入れる場づくりが少しずつ進められています。

奥行きのある店内。キッチンスタジオ、イベントスペースが併設されている