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古唐津に「革新」をもたらした多彩な表現力~武雄焼

2017年02月09日

白い素地に広がる斬新な文様

 武雄焼は16世紀末、豊臣秀吉の朝鮮出兵に従軍した武雄領主・後藤家信とともに渡来した陶工たちが窯を開いたのが起源とされます。古唐津の流れを汲み、素朴な土味を生かした茶系統の陶器は「二彩唐津」「武雄唐津」「弓野」「二川」などと呼ばれ、17世紀には東南アジアへも輸出されるなど世界中に流通しました。その一方で、周辺産地の影響を受けて陶石を使った磁器も早くから作られており、幅広い作風を持つのが武雄の陶磁器の特徴と言えます。器の種類も大皿、瓶、壺、水指、茶碗、甕など、多岐にわたりました。

 その美術的な価値については長い間、注目されてきませんでしたが、近年になって東南アジアに輸出されていたことが分かり、その豪快な筆使いの魅力や釉薬(※)をかけ流しただけの斬新な文様、多彩な表現力なども再評価され、「古武雄」と呼称されるようになりました。
 古唐津は薄い茶色の素地と簡素なデザインによる素朴さで人気を博しましたが、古武雄には「褐色の胎土を白く塗る」という装飾が見られるようになり、ここに表現面で大きな革新性がありました。絵付けには必ずしも向いていなかった「褐色の胎土」が「白い素地」となったことで、新たな表現の幅が広がったのです。
 こうして得られた〝白いキャンパス〟を舞台に、緑や褐色で絵を描いた「鉄絵緑彩」、緑や褐色の釉をかけ流して文様にした「緑褐釉」、白い土を刷毛で打ち付ける「打ち刷毛目」、素地に文様を掘ってその部分に異なる色の土を埋め込む「象嵌」などの文様が生み出されました。


※釉薬(ゆうやく)=灰や砕いた土石類などを水で溶いた薬品。器の表面に塗って焼くとガラス質の膜で覆われ、耐水性を高める効果がある

「鉄絵緑彩」「象嵌」…装飾技法もさまざま

 武雄焼は周辺産地の焼物の影響を受けて、多種多様な陶器・磁器が混在していますが、その装飾技法も多彩です。現在、武雄市内にある現在約90件もの窯元では、こうした伝統技法を生かしつつ、個性を尊重した作品が生み出されています。

◆刷毛目(はけめ):素地が黒い土の場合、白土をかけて白くする作業(=白化粧)を刷毛(はけ)で行い、その塗り目を文様のように表したものを、「刷毛目」といいます。

◆鉄絵緑彩(てつえりょくさい):白い刷毛目地に、鉄を含む釉薬で絵柄の輪郭線や幹などを描き、緑色の釉薬で線の内側を塗ったり、枝葉を描いたりする技法です。この技法を使って松などを描いた鉢や甕は、その生産地の名をとって「弓野の松絵」と呼ばれ、全国に流通しました。

◆象嵌(ぞうがん):素地が乾かないうちに文様を彫り、そこに異なる色の土を塗り表面を削ると、くぼみにその土が残ります。文様に異なる土を埋め込んだものを「象嵌」といいます。

◆鉄絵(てつえ):素地に鉄の顔料(着色に用いる水に溶けない粉末)で絵付けを行う技法です。李朝風の抽象文や草花、風景など、文様は様々です。

◆緑褐釉(りょくかつゆう):緑色の釉(緑釉)や褐色の釉(褐釉)を大胆に流し掛ける技法で、彩を豊かにする効果があります。いずれも単色で用い、作品全体へ掛ける作品が多く見受けられます。

◆染付(そめつけ):素焼きした器に「呉須(ごす)」と呼ばれる青藍の顔料で文様を描き、透明釉をかけて本焼きをする手法です。「呉須」は焼きあがると青色に発色するため、白磁と青のコントラストが鮮やかに映えます。